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耐震偽装問題
平成17年11月、地震大国日本で、ある出来事が住宅の安全・安心を揺るがすことになりました。耐震偽装問題が発覚したのです。
期せずして、私は、この問題に深くかかわることになりました。平成17年11月24日、2冊の構造計算書が私の国会事務所に突然届けられました。耐震偽装の闇を暗示するこれらの資料をきっかけに、以降、私は偽装が行われたマンション等の現場に足を運ぶとともに、関係者から直接事情を聴取するなど徹底的に調査を行いました。その結果をもとに、参考人質疑、一般質疑、証人喚問、集中審議、本会議代表質問など、国土交通委員会、予算委員会並びに本会議にて合計16回にわたって耐震偽装問題の質疑を行うこととなりました。
耐震偽装問題の原因については、姉歯秀次という一人の一級建築士が行った偽装にだけ目が向きがちです。しかし、単に犯人が捕まったということでこの問題に蓋をして、全ての責任を転嫁させることは許されません。私は質疑を通して、国土交通省の不作為や、設計と施行を一体的に支配する経営コンサルタントの存在など、その背後にある根本的原因をあぶりだしました。
国土交通省の不作為とあいまいな責任の所在
調査を進めるにつれてわかってきたのが、国土交通省の危機意識と責任感の欠如からくる不作為が、この問題の根本的な原因となり、さらには傷口を深くしていったという事実です。
耐震偽装をもたらした建築基準法の欠陥については、平成10年の阪神大震災を受けた改正の時点で国会の質疑でも再三再四指摘されていました。所管する国土交通省がこの事実を認識していないはずはありません。
平成14年、耐震偽装が発覚する実に3年前、国土交通省は平成10年の改正について、「基本的な制度的枠組みを維持しつつ行う対策には限界がある」として、抜本対策について国土技術政策総合研究所 (国総研)で既に研究を進めてきたのです。国総研は社団法人日本建築構造技術者協会(JSCA)に業務委託をし、構造設計実務者サイドからの建築規制制度や技術的基準に関するニーズや提案についてまとめさせました。それが、「建築構造分野における品質確保のための新たな社会システムの制度及技術基準に関する調査業務報告書(新社会システム研究会報告書)」です。その中には、ピアレビュー、第三者評価システム、資格制度の見直しと倫理性の確保、大臣認定プログラム、保険制度の整備等、耐震偽装問題を受けた改正のポイントになるものすべてが網羅されていたのです。平成14年の段階で、平成10年の改正には限界があることが指摘され、少なくとも報告書の出された平成17年2月の段階で問題点と改善策を十分承知しながらも、抜本改正を行わなかった国土交通省の不作為の責任は極めて重く、この点を厳しく指摘しました。
偽装が発覚した当時の国土交通省の初動の対応も極めて問題です。偽装の事実を発見した民間の確認検査機関が、事態の重大さから国土交通省本省に通報しました。しかし、本省は、特定行政庁と当該確認検査機関の間の問題であるとして取り合わず、耐震偽装問題が発覚した後も国土交通省の消極的な姿勢は変わりませんでした。翌年の3月にも確認検査機関から国土交通省に対し、構造計算書に疑義がある物件(マンション)があるとの通報がありましたが、国土交通省は同様の対応を取り続けました。つまり、契約者の方々は、6月にこの件が報道された段階で始めて事実を知ることになったのです。質疑の中では主体的に動こうとしない国土交通省の消極的な姿勢を繰り返し質しました。当時の北側国土交通大臣からは「この問題にしっかり対応する。」との答弁を引き出しましたが、答弁に立った国土交通省の役人は杓子定規の答弁に終始し、責任感のある答弁はついに聞くことはできませんでした。
民間の確認検査機関や特定行政庁は、国土交通省の役人が監修した審査要領をもとに建築確認を行っていました。しかし、結果的には民間の確認検査機関のみならず、特定行政庁までが、多数の偽装の見落としてしまっていたのです。制度そのものに欠陥が存在していたのは事実であり、その責任は本来国土交通省がとるべきものです。しかし、国土交通省の役人は審査要領について、「建築確認等の公正かつ的確な実施を図るためによるべき方法を一律かつ厳密に定めたものではありません。(山本政府参考人)」というあいまいな答弁に終始し、責任を認めることは終にありませんでした。まさに権限あって責任なし、無責任、責任回避の構図がここにあります。国土交通省が、「国民の安全を守る」という強い使命感を持ち、「主体的に解決していこう」という意思を持たない限り、このような事態は繰り返されることになるでしょう。
経営コンサルタントによる設計・施行の一体的支配
耐震偽装のもう一つの大きな原因が、本来独立して存在するべき、建造物の設計と施行が経営コンサルタントという黒幕の下に一体的に支配されている事実です。設計と施工を実質的に支配する経営コンサルタントが、設計側に対し、利益を多く上げるために、使用する鉄筋やコンクリートの量を減らすことを求め、設計側がその圧力を受けた結果として構造設計の偽装という結果に至っている構図です。
このような経営コンサルタントについては現行法では何ら規制がなされていません。法律が実体に追いついていないのです。そこで経営コンサルタントに対する何らかの規制を行うことが必要であるとの主張を繰り返し当時の北側国土交通大臣に訴え、その結果、国土交通大臣から現法体系に加えて、何らかの対応を検討すべきかについて「勉強させていただきたい。」との前向きな答弁を引き出しました。
そもそも耐震偽装事件に見られる欠陥建築物の建設は、建築産業において設計、施行、監理が分離されていないことにその根本的原因があります。建築士法18条3項は、「建築士は、工事監理を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に注意を与え、工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない。」と定めています。いわゆる工事監理者たる建築士が、施工業者と対峙関係にあることを法は予定しているのです。しかし、実際は工事監理者の届け出について名義貸しが横行し、さらには建築士が施工業者の従業員であったり、施工業者との経済的なつながりから、経済的に従属的な地位にあるのです。そのような中で、この条文が死文化しているところに問題があり、この状態が今日まで放置されてきたのです。
国土交通省が現場の状況を十分把握した上で、わが国にとってどのような建築物の構築を認めていくのか、ひいては建設産業そのものをどのような位置づけとして捉えていくのかという大局を持たずして、抜本対策は望めません。ここでも行政側の不作為体質から脱却と主体的な取り組みが求められます。



